Chronicle :ampel 河原太朗

DISCOVERY、出発駅 Terminalへ。

Chronicle :ampel 河原太朗
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Chronicle :ampel 河原太朗 Written - Terminal



シルキーなベースラインから腹にずしりと来るビートまで、多彩な音を奏でるライブの空間、そのそこかしこに河原太朗がいる。ampelの時間。ブラックミュージックに造詣が深いかと思えば、自由で都会的な明るさも感じさせる、この不思議な魅力を持ったバンドのフロントマンとの対談。ampelのこれまでの歩みと、これから続く旅のマップを覗く。


Terminal : 宜しくお願いします。まずはバンドの初期からの歩みについてお伺いしてもいいですか?

河原太郎 : Bass & Voが私、河原太朗、Drumsに吉岡紘希、Guitar(BON)竹村郁哉という3人でampelです。結成が2009年に僕が中心になって仲間を集めて、それまでベースしか弾いてなかったんですが、初めてVoを録音して始めたのがその年で。今のメンバーに変わってスタートしてから4年。2012年の夏に今の体制になりました。趣向も変わってきたので。今ようやくグループとして求めるものは明確になってきました。3人組での音楽作りというところで。

T : 以前シーケンスを使って曲を作ったりも最近していると聞きましたけど、メンバーが変わったことで曲の作り方も変わりましたか?

河原 : 音作りというよりかは、曲中での言葉が変わったかな、と。最初の方が出てくる言葉が割とダウナーだったというか。暗いというか、自戒を込めた歌っていうのが思い返すと多かった気がして。あんまり人に向けて歌うっていうよりかは、自分のにじみ出てくる、明るくない言葉が出てきていたかもしれない。全部ではないけど、そういうのが意外と多いな、って。

T : でも『Too high』などは、外に向いていると思うけど。明るいというか

河原 : そう、それはちょうど今のメンバーになってから。やっぱり人が変わると環境も変わるので、心持ちも視野も変わってきて。外から吸収したものを言葉にしたり。音楽のベースになっているのは何かと言われると抽象的なんですが、シティーポップというところに当てはまるのもいいのかな、と。ただ、個々がそれを好んで結成したわけではないので。

T : ampelはもっとルーツ色が強い印象ですが?

河原 : 一番自分の好み、ベースに関しては黒人音楽が好きだったりとか、そういうものは自分の曲に出ているとは思います。AORとか自分のルーツもあって、そこにドラムはロック、ギターはブルースやフォークが好きなので、それがにじみ出て今の音楽になっているというか。

T : とはいえ、懐古主義的なものは感じないですよね。この前もライブでエレピみたいな、かなり不思議な音を出していましたが?

河原 : あれね、なんかギターの弾き始めの音をループさせるペダルがあって、サステインペダルみたいな効果があるんです。そういうのも使って、あれ、かっこいいんですよね。あんまりギターだ!っていう音にこだわっているのではないので。ギターの場合ってボイシング、ポジションだったり限定されているじゃないですか。だいたい聞き覚えがあるっていうか。その中に、あまり聴き覚えのないボイシングだったり、音が鳴ってないところをBASSや声、工夫で補っていくのが、自分たちの音作りで大事にしている部分ですね。だから、メンバーが変わってそういう部分により好奇心を持つことができたし。曲を持ってくるっていうよりかは、もともとのアイデアを持ち寄ったアイデアから曲を作る形で。機材で補えることもあるし。あとはメンバーみんな声がいいので(笑)それはラッキー、というか。

T : 歌も含めていろんなことに興味が有るメンバーだったっていうこと?

河原 : 多分、自分の中で、誘う時点でそういう人なんだろう、っていう探知機能が働いていたんでしょうね。それも含めてめぐりあわせ、というか。

T : ところで使用機材について教えてくれますか?

河原 : ベースはFender Mexicoの。そんな古いものじゃなくて。それがメインで、もう一つはいわゆるPJ、Fender Japanのプレジションとジャズが同時についているもの。それがベースを始めた頃から使っているやつで。あとは、カラマズーというメーカーのものを自分で改造して使っています。ヘッドがSGだと違う形なんですけど、少し特殊な形のヘッドで。少しいなたい形に惹かれて(笑)年代的には70年代の物で、改造しやすいように中のホロウ部分が多い物になっていて。ビザールとかも好きなんですが、車にしても新車よりは昔の国産への憧れはあったり。その当時の物の作り方、考え方も見えてくるので、古いものはそういう意味で好きです。ベースアンプは持っていける時はFenderのBassman 100を使っています。

河原 : その時代に行けるわけではないので、やっぱりその時代の人が残した匂いを嗅ぐ、みたいな。そういう行為が割と好きなんだと思います(笑)

T:なるほど。ampelのルーツ色って、コテコテではないのもそういうことでしょうか?

河原 : 体現になっちゃっても、というか。そういう年代のものをまとった今の自分たち、というか。

T : その年代が好きなわけじゃないというところでは、、、音?

河原 : だったり、人のドラマにまでは、、という。ついばみすぎてもというか。あくまでそのテイストを嗅ぐのが好きなんだと思います。最近の、温故知新というか時代のフラッシュバック的なものも、繰り返すだけでもな、というところもあって。例えば80年代ももう30年前じゃないですか?自分の感覚って変わらないと思うんです、歳を重ねても。楽器はツールですかね。

T : あまりそこにセンチメンタルな感じはない?

河原 : そう、そういう意味では執着はない。ただ、今いいな、と思うものを自分たちの音楽に落とし込んでいるだけで。

T : ところで、ビデオなどもSLEEPERS FILMなどと発表されていますけど

河原 : ビデオ、まだ撮影はしていないですけど、MVを出したことがないんですよ。節目ごとの記録としてライブ映像はありますけど。イメージビデオみたいなのは作っていなくて。それに、急いで作らなくていいかな、とも思っていました。構想は練っていますけど、派手なことはしたくないなと。ampelの表現で言えば、楽器はいらないかな、と。普段ライブでやってるから。と思うところがあったり。まだ作ってないからかなり偏った発言ですけど(笑)

T : ampelの音楽は、どういった情景に合うと思いますか?

河原 : シーン的に言えば、お酒の席だったりとか、BARであるとか。ファンタジーではないかな(笑)どこにでも入れるというか、入り込めるような音楽の幅を作っていきたいですね。よく「夜の似合うバンドですね」って言われるんだけど、自分たちでは別にそうは思ってなくて。まあそれが、夜になったら現れますからってことでもないし、1日を通して朝聴いても、お昼聴いてもいいし。1日どこにいてもなんとなく安心できるような存在の音楽でいられればいいなって。全部が安心できればいい、っていうわけでもないですけど。そういうところで考えたら、愛憎劇でもいいし(笑)不幸せを歌うような。あくまで人間模様のような中で、っていう。映画で言えば。それぞれ、この瞬間が大事だな、とか、一番大変だったな、とか。そういう時が止まるようなタイミングの時に、自分らの音楽が流れたとしたら、嬉しいな、って。去年ENNDISCと作ったのが『Image』というシングルだったんですけど、一緒に制作していたENNDISCの出口さんとのイメージの共有から始まって。だから自分たちの中での「イメージ」っていうのは大事で。

T : なるほど。ampelはスムースな質感が好きなので、そう説明しますけど、それもまたイメージですね。ところで、DISCOVERYというイベントを開催していますけど、どういう経緯ですか?

河原 : 去年はDRAMAという春夏秋冬に4回してたんですけど、まさにドラマを一緒に作っていこうという。1年間ampelと歩いてきたな、と思ってもらえるように。

T : 4シーズン通じて。

河原 : そう、継続してやってくことは大変だけど、そのスパンで一緒にいろんなことを体験するのってなかなかないじゃないですか?だから、その人の過ごす1年の中に良い彩りを渡せるといいな、という。で、今年に入って自分たちのコアを見直したのもあったのと、DRAMAも最後は「クライマックス」という形で完結させたんですが、また音楽について考える時期があって、実は一緒に共演していなかった人とやるとか、共通して年齢が近い、とか、そういう今まで居場所が違った人たちとやる、みたいなことを考えて。なんとなくこういう人たちと共演したら合うかな、というのを抜きにして。交わってなかった人たちと。それでイベントがどんな感じになるのか想像できない、みたいな。それがイベントで一番大事かなと思って。雰囲気が合う人たちを呼んで、いい夜にしようよ、っていうそういうことじゃなくて、DISCOVERYって、発見とかそういうことだから、いろんなシーンの人たちが来ることでの発見や、こういう空間になったな、っていう発見であったり。化学変化まではいかないけど、自分たちも発見できるようにしています。

T : そして今回は梅田クラブクアトロではじまる『Terminal』に出演しますが、皆さんに伝えたいのは?

河原 : その場で生まれる現象を、自分たちだけじゃなくて、みんなが同じような気持ちで挑んだ上で、起こせたらいいな、と思っています。演者だけじゃなくて、当日来てくれた人も楽しませられるように。ラッパーもいるし、その名の通りYOKOYUREみたいなグループいるし。Terminal、各々の何かしらの出発につながればいいな、と。

T : 終点は出発駅でもありますからね。

河原 : そう、それをみんなでやれたらいいですよね、やっぱり。でも、ここまで言っておきながら、負けたくないな、っていう気持ちは、俺ら持ってんじゃないかな(笑)その中でも、一番カッコよくありたい、って思いますよねやっぱり。根底にはそれを持ちつつ。演奏しに行って終わるわけにはいかないから。

T : みんなで出発するという。

河原 : そのための日であってほしいな、って思いますね。みんながそれぞれいろんな場所に行くと思うので。それを最初から見に来てほしいというところで、まあ、みんなで遊べる、楽しい日にしたいですね。

–End

Profile

2009年河原太朗によって結成された、竹村郁哉、吉岡紘希の三人組からなるバンド。シンプルな音を抽出したアンサンブルと重なるスムースな声。高揚と心地良さが相まった音楽性は昨今各地の音楽ファンにその存在を浸透させている。single / concept mini album / download、2015年3月11日にリリースされた『Image』を加え現在5作品を発表。

Info

大阪でのampelのライブはこちら!

『Terminal』#1
日程 : 2016.9.15(木)
会場 : 梅田クラブクアトロ
OPEN 17:30
START 18:00
前売 : 3,000円
当日 : 3,500円
チケット ぴあ Pコード:300-661 ローソン Lコード:52641

Act : YOKOYURE / ampel / Re:Lilly / TAKOPEO / 伊禮恵 / Mae.(O.A)
LIVE PAINTING : WHOLE9


Hip-Hop、urban soulからアンビエント・ポップス/SSWまで、関西を中心に様々なジャンルから実力派アーティストが参加するライブイベント『Terminal(ターミナル)』。同名のデジタルメディアと同時にスタートするこのイベントは、梅田クラブクアトロのみでの開催!自由な雰囲気の中で過ごすことができる関西での新たなイベントとして、クリエイター・音楽ファンのみなさんと一緒に作り上げていくシリーズとなれば幸いです。

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