Terminal対談 : 中村佑介のイラスト教室 その2

教室では、投げかけのあとも対話が出来る

Terminal対談 : 中村佑介のイラスト教室 その2
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Terminal対談 : 中村佑介のイラスト教室 その2 Written - Terminal



イラストレーターの中村佑介が大阪で取り組む試み『中村佑介のイラスト教室』。教室内の雰囲気など、イラスト教室の授業風景について知ることができる、Terminal×中村佑介 対談その2。


イラスト教室でのクラスの様子

滝本 : で、そんないい大人が開催しているこのイラスト教室だけども、生徒さんの最年少が13歳。

中村 : そう、で、上が43歳。すごい差がある。でもだからって、絵画教室じゃないからね。ぬるいことはやらないので。(作品を評する点で)きちんと叱りもする、というか、本気でイラストレーターの、プロのやり方を教える、というか。

滝本 : でも、例えば13歳の生徒さんとかが、お母さんと一緒に来たりするのって、さらにそれが遠方からだったりすると、それは多分、一大決心なわけじゃない?自分がその年齢の頃のことを考えると。でも、初めて来ても授業はいやな感じじゃなく、笑いもありつつ、なおかつピリっとしていてイイナ、って思う。

中村 : 「厳しさ度」って、感じ方が年齢によっても違うと思うので、二部クラスの人が一部の授業を見たら「そんな優しい言い方するの?」って思うかもしれないんだけど。それは実は、一部の方が時間が早いから、10代とか20代の人も多いし、中学生の子たちとか。年齢で時間帯を分けているので。その子たちはやっぱり、注意するよりやる気になってもらうことが大事で。具体的にこうしなさい、って言っても伝わらない部分があるのは仕方ないから。「よーし!やるぞ~!!」っていうのを1秒でも長く続けさせることも大事にしていて。もちろん絵の講評というのはしっかりやるんだけども。で、二部は20代中盤以降から40歳くらいまででやっている時間帯だから、逆に生易しいこと言ってたらホンマに時間ないで、っていうことなので。割とズバズバと「何やってんねん!」といったようなことは交えるけども。伝え方はそういう違いはあるけどもね。

滝本 : それでも、雰囲気は良いよね。課題が出ることがわかっているから、次の回に卒業するっていう小目標はあるじゃない?で、それでもダレないのは、みんなの前でちゃんとマイクで話しているじゃない?生徒さんも自分の作品の講評の時は。

中村 : 喋らせてるよね。自分の絵を、自分の「言葉」を使って。

滝本 : というより、生徒さんは中村くんと会話しているわけだけども、Twitterだと、文字数のこともあるけど、合評の時ほど話せないじゃない?

中村 : そう、最初の投げかけはあるけれども、その後は僕が話すだけになるからね。でも教室は、対話ができるからね。

滝本 : 人前でああやって(会話の上で)自分の作品について話すのも良いというか、実際には必要なことだと感じるけれども。実社会で。

中村 : あれは大きいよね(笑)詳細に書いたら、ビビってこれからの応募が減るかもしれないけど、でもみんなやるんよね。13歳の子が一番最初になるから。でもちゃんと話しているっていう。

滝本 : その機会がこういう教室でよかったんじゃない?って思うけれども。いきなり外で、とかより。誰にも変な風に思われたりしないし。その空気が良いなと思う。何も思わずに話せるような。全員目的が一緒だからね。

中村 : イラストっていうのも、表面上の技術より、考え方や見せ方の問題やから、ある程度絵の上手い人が集まっていると思うのよ。学年で一番絵のうまいような子たちとか。で、やっぱりそう人たちの共通点って、、僕は「学年で二番」って言った通り、何が二番だったかっていうと、僕は学生時代、コミュニケーション能力がなかったのよ。ものすごい、喋れなかったというか。絵を言語化できなかったし、恥ずかしかったし。でも、その年齢で絵をうまくなっている人って、例えばイラスト教室の20代までの生徒の人たちって、僕のその当時の画力を遥かに超えているわけよ。これ、一緒の学年やったら絶対嫌いになってるタイプやわっていう(笑)とうてい敵わないから。そういう子たちって、やっぱり話せるんよね。コミュニケーションが取れるから、結構物怖じせずに。だから、授業中でも、「よく話せるなぁ」って横で聞いてるけれど。僕が中3やったらもう、大変なことになってるよ。もう、黙ってただ、おしっこ漏らしてるよ(笑)。

滝本 : あとは、各学期、すごく個性的な生徒さんもいるよね。

中村 : 面白い子、いるね(笑)説明不能というか。だいたいこれだけ絵を見てきたら、絵と、応募の時の文章で、大体だけど、「こう言う感じの子かな?」と分かるけれど、、積極的だったり、シャイだったり、シニカルだったり、素直だったり。それは全部、おのずと作品には出ていて、作品が稚拙であればあるほどそういったものは出るし、上手ければ上手いほど隠せるし。イラスト教室の子たちはまだ発展途上だから、すごくわかりやすいんだけど、でも、その中でも、「なんでこの子はこれを描いてるんやろう?」っていう感じの絵もあって。会ってみたいな、と。

滝本 : なるほど。まあ人柄というか。出るのでしょうね。

中村 : そうなってくると、もはやそれはファンだよね、その絵と作者の(笑)。1期生でいうとムーチョくんとか。「カラムーチョ(スナック菓子)が大好きなのでカラムーチョの絵を描いてきました」っていう。絵にするほどカラムーチョ好きなやつに会ったことないし。でも、彼は真面目っていうか、素直というか、いい奴で。絵はパっと見た感じグロテスクだったりするんだけど、でも不思議と嫌悪感をは感じさせない。なんでこんなグロテスクなのに気持ち悪くならないんだろうって。それって、その人の人間力っていうか。濃さ、の部分で。だから会いたいな、と思ったりもするし。みんなから好かれるというか、「変わってる」かもしれないけど、「意地悪なやつ」ではないんだよね。クラスでもムーチョくんは友達できてたよね。Twitterでも、イラスト教室通ってない子たちやのに「やっぱムーチョくんはおもろい」ってなっていて(笑)やっぱり引き寄せられるんだ、っていうか。

滝本 : 大事なことはすでに持ってる、っていうことですかね(笑)

中村 : そうやね。あの子は持っちゃってるわ。しかもサボらないからね。でも、教室の卒業後にもちゃんとスパークして、すごい絵描いていたよ。「自分の良さってここなんだ」って少なからず気づいたのでしょう。今はね、本人より絵の方が面白くなってるよ。絵描きになりたいなら絵の方が上手くないとあかん訳やからね。だから「ああ、よかったな」と思って。あと、もう一人。女の子でも面白い子がいて。

滝本 : あっ、報われない片想いの女性がモチーフの、、、僕は好きでしたけど。

中村 : そう、ひたすらストーカーの女を描き続けるっていう子がいて(笑)。絵の説明がまず面白くて、教室中爆笑の渦に巻き込まれるという。あの子も気づいてないかもしれないけど、なんかやっぱり『中村佑介のイラスト教室』と銘打ってるけど、僕のような具象画で「モチーフは等身大で正確に描かないといけない」とか、そういうことは教えてないし、教えるつもりもないんだけども、みんなの”中村佑介”に対する思い込みの中でそういう絵を描いてきたりもする。その子は、抽象画に近い絵をもう一つ描いていて、それを後から見せてもらったんだけど「そっちを出せよ~!」っていうすごいのを描いていて。要は、気を遣ってない絵なのよね。自分に対してもそうだし、僕に対してもそうだし。それで、人間的に魅力的な人は何を描いても魅力的になるんやな、と思わされたり。もちろんイラストの先生としては、イラストレーターとしてどう売るのか、というのを教えるので、そういう個性的な子たちはイラストじゃなくて画家や漫画家でも、何にでもなれちゃう。極端な話、絵じゃなくても魅力的やから。そういう人たちに会えるのは、僕にとっては財産でもあるね。

滝本 : なるほど。絵描きとして発展していく上では、自分の絵の適性に出会うこともあると思うし、長い道のりなわけだから、若い時代にいろいろな視点を発見するのは全くもって悪いことではないよね。

中村 : まあ1期生は本当、みんな上手くなった。本気で取り組んでくれたというか。それをTwitterのイラスト教室ではなかなか感じられないことも、1期生40人ほどだけど、全員から感じ取ることができたから。今回はもうちょっとみっちりやりたいな、という人たちが半分くらいいるんだけど、課題提出でも、2か月前だから、、デッサンとかでも半年でようやく成果が見えてくる感じだけど、それなのにこの2か月で絵が良くなっているっていうのは、上達というより、単純に意識が変わって、本人たちのお尻に火がついたというか、本人たちのやる気以外ないんよね。

滝本 : あと、実際の授業ではTwitterと違って、自分の講評が終わった後も、他の生徒さんの作品の講評も聞くわけだからね。目の前にいるわけだから。自分の番のあとも授業は続いて、そこで思考がストップしないじゃない?それも大きいと思う。

中村 : 1部と2部合わせて8時間ほどやっているから、ずっと通して見学できることも考えたら、学校で1時間目からずっと美術の授業です、みたいなことやもんね(笑)。美大でも実技と一般教養の時間が半々くらいなのに。

滝本 : コミュニケーションをとりながら考える時間が長く取れる、っていうのがイラスト教室を開催する良い部分の一つかな、と思う。しかも一人づつの時間が短く足早に講評していくわけじゃないから、他の生徒さんの作品講評でも自分のことのようにじっくり考えると思うので。

Info

中村佑介のイラスト教室

イラストレーター・中村佑介がartyard studioで定期的に行っている、年齢を問わず、美大生、専門学校生以外で「イラストがうまくなりたい!」「将来イラストレーターになりたい!」という方を対象とした講演会・作品添削会です。開催の際、新しく受講される生徒の募集は中村佑介サイト・Twitterでも告知されます。現在の第三回イラスト教室の生徒受付は終了しております。時期生徒募集(見学者含む)は中村佑介Twitterならびにサイト、artyard studio Twitterなどでお知らせいたします。

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