Chronicle : 呂布と紐とく下北沢GARAGE Written - terminal
下北沢は一番街の先にある老舗ライブハウス、GARAGE。オープンから20年を過ぎた今も、たった今活躍中のミュージシャンから楽しい人々・クリエイターが集うこのライブハウス、Terminalがスタートしたここ大阪では若い世代のバンドマンにあまりよく知られていないようだが、こんな楽しい場所を知らないなんてもったいない!というわけで、オープンして間もない頃からのおつきあいのTerminal編集長・滝本ハルオと、呂布(ズットズレテルズ / KANDYTOWN)を中心に、圓山満司(現・下北沢GARAGE店長)、そして突然知り合ったシャラ(from バングラディシュ)を迎え、お酒を片手にその魅力を紐解く、春の夜。
滝本ハルオ : こんばんわ。お酒の用意は良いでしょうか?
圓山満司(GARAGE) : …!今買ってきます!
ハルオ : 待ってるっ!
(5分経過)
圓山・呂布 : 準備OKです!
ハルオ : それでは、対談『呂布と紐解く、下北沢GARAGE』スタートです。まずは自己紹介をお願いします。
呂布 : KANDYTOWN、ズットズレテルズのMCの呂布です
圓山 : 下北沢GARAGEの圓山です〜
ハルオ : 私を含めて、この3人はそれぞれの時代でたくさんの時間を下北沢GARAGEで過ごしてきたわけですが、まずは各々のGARAGEへの入り口と、その頃の様子を教えてもらいましょう。過去より順番に。
圓山 : 僕は2007年、19歳の時にバイトで入りました。
呂布 : 今26歳で、18歳の時に初めて来たので、ちょうど7〜8年前、2009年くらいでしょうか。
ハルオ : では時系列順にいきましょうか。僕は1998年頃、下北沢ブーム前夜〜真っ盛りの時に、初代店長の出口氏の企画する『HASHIRIYA』というイベントに自分のバンドでずっと出演してました。初めて来た時は、僕は文化放送のレーベルにいて、マネージャーと一緒に来て。そこで出口氏と出会って、18年以上経ちますが、今でも大阪でも東京でも遊んだりします。
大橋(下北沢GARAGE) : 『HASHIRIYA』は98年〜2003年!(遠くから)
Terminal : スケジュール残ってるの!?すぐ出るの、すごくない?(笑)僕はその『HASHIRIYA』でずっとライブしていて、当時『HASHIRIYA』に出ていたのは、ART-SCHOOL、BURGER NUDS、BEAT CRUSADERS、HOLSTEIN、、
大橋 : ACIDMAN、THE WONDER SOUL STYLE、Roletta Secohan〜!確かレミオロメンもかな。
ハルオ : そう、あとmesser schmitt Jr、ELEVATOR ACTION、ビーマン・バングラディシュ・エアラインズ、HONDALADYなど、当時のGARAGEの面々は数え切れませんが、何せ濃いメンツで。それぞれのバンドのファンの人々が、勝手にわら半紙とかでバンドの情報誌みたいなの作って配っていて、それも楽しかった。個人情報もクソもなかった。
圓山 : その後『HASHIRIYA』から『LOCAL』というイベントに移行していったのかな。2006年か2007年頃、ペトロールズが出始めたのもその『LOCAL』で。それにendiscの最初のアーティスト、リトルハンセンや、あとフクロウズとか。僕はペトロールズを見に来て。だから『LOCAL』が僕の初GARAGEです。そのままGARAGEに入っちゃった。初日が長岡亮介(ペトロールズ)さんのソロイベントで。長岡さんのお父さんがやってるカントリーのバンドとか、ペトロールズとか、ししゃもっていう長岡さんが中学校からやってるやつ。
呂布 : 僕はズットズレテルズのライブが最初ですね。ガレージでズレテルズのライブが決まっていて、挨拶しにメンバーの浜(オカモトズ)くんとレイジと三人で遊びに行ったら、RESCUEっていうイベントをやってて。そこで初代店長の出口氏と会いました。アングラさが自分と近い感覚のイベントで。それで、出口さんと会って「ラッパーです」って言ったら「フリースタイルやってよ」って言われて。スタート前にフリースタイルをやって、それが一人でライブハウスで何かするってのがそれが初めてで。
圓山 : お客さんは5人くらいで(笑)。
呂布 : 本当、初めて一人でやって、誰も知らない人の前でのステージでした。それから1年後くらいには『中山フェスタ』というイベントをやっていて。
圓山 : そう、呂布主催のイベント「中山フェスタ」に出てた出演者は今輝いてる。SIMILAR、リリカルスクール、Bankroll(KANDYの前身)などなど。
呂布: ズットズレテルズ自体は5回くらいしかライブしたことないけど、その中で2回GARAGEでやっていて(笑)。
圓山 : 2/5がGARAGEじゃん(笑)
呂布:そう(笑)そのうち一回はニコルズと対バンしたのを覚えてます。もう一つはハマが企画したラジオで『スクールオブロック』(Tokyo FMのSCHOOL OF LOCK!)という番組があって、そこから派生した『閃光ライオット』というのがあって。それの審査員にベボベ(Base Ball Bear)のコイちゃん(小出祐介)がいて。僕はバンドとかあんまり詳しくなくて、バンドマンを一人も知らなかったので、Base Ball Bearを知ったのも普通に夜遊んでくれていたコイちゃんと出会ってからなんですけど、その後、その閃光ライオットでズレテルズが決勝に残っていて。下北沢の線路のとこにベボベのポスターが貼っていて、それで初めて何してる人かを知った。
圓山 : もう一回は、閃光ライオットの決勝に残ったアーティストをハマが呼んでライブイベントを勝手に行うっていう(笑)。
Terminal : そして今、もう一人登場しましたけど、こんばんわ〜!
シャラ : こんばんわ〜。シャラです〜
圓山 : バングラディシュの人です
ハルオ : ますますGARAGEらしい空気になってきましたが、シャラちゃんは、最初どうしてGARAGEに来るようになったんですか?
シャラ : golfのANDOさんがサポートしているcuusheというアーティストのいるflauっていうレーベルがあって、そこを手伝うようになって。それで、ANDOさんに連れて来てもらうようになって。去年2016の夏くらいから(笑)初めて来た時は、flauのライブイベントがあって、圓さんと安藤さんが打ち上げで仲良くなって。で、ある日「じゃあ19時にGARAGEに来て」って言われて、そのまま宇宙会議というイベントに出されて。
圓山 : アングライベント(宇宙会議)に何も知らず、呼ばれるっていう。(宇宙会議)は宇宙について語るトークイベントなのですが、その題材をもとにいかに自分の生活を豊かにするかという趣旨で…。
Terminal : それ自分の生活豊かになるのん?
圓山 : なり…たい
Terminal : 俺もなりたいわ
シャラ : 一切趣旨知らなくて(笑)。そのまま出て、お客さん以外ではそこからGARAGEに来るようになりました。
圓山 : 趣旨も何もわからずトークイベントに出席とか、飛び入りで歌うようになったり。圓山の誕生日の日に中島みゆきをカラオケで歌わされたり。10年以上前から変わってない出会いかたではないでしょうか。
ハルオ : 下北沢の光画部やな、、、
– きっかけを作り、経験をプラスに変えられる人が挑戦できる場所 –
呂布 : まあそれで、僕と同い年がいろいろと巻き起こしてるのが今のGARAGEですね。THE THROTTLE、SuchmosやSANABAGUNとか。メインストリームでやって、遊びに来てGARAGEでもやるっていうか。
圓山 : 今出てきたバンドって、不思議と何かしら呂布が絡んでいるという。TK(高橋栗原- 圓山と出口のユニット)ファミリーでやってきたりいろいろ通過して。
呂布 : GARAGEが俺にいろんな人を引き合わせてくれたので。コイちゃんとか、(長岡)亮介さんとか。俺が面白いと思っているやつとか、面白いと言ってくれる人が自然とGARAGEに行こうよ、となっているというか。
ハルオ : それはわかる。連れて行きたくなる。ライブハウス、というか「GARAGE」に。いつ行っても面白い人に出会える。artyard(編集部所在の大阪のスペース)にも展覧会の時やライブの時に出口氏や長岡くんが「いる?」ってフラっときたりするけど、GARAGEはそういう感覚の人が集っているよね。あそぼみたいな。
圓山 : でも、それも呂布がいなかったら途切れてたかもしれない。
呂布 : 正直、(途切れるという面で)過去にヤバいな、と思ったことはあります。雰囲気的な面で。経営とかじゃなくて。GARAGEの良さというか、空気感がわかっていたので。みんなで夜な夜な曲作ったりGARAGE、こいちゃんとベボベで仕事するようになったり、セッションとか、それを経て、ふと一番大事な部分の出来事が「同世代」で起こってないな、と思うような。それが面白くないと思っていた時期がありました。そこでモチベーションがダウンして、一時ソロでいろんな経験をしつつ、KANDYTOWNで東京ストリートファッションに触れつつ。そこに、SuchmosやSANABAGUNが同世代として出てきて。
圓山 : 呂布は今月『All in One』というEPで渋谷WWWでリリースパーティーをしたりも。
ハルオ : ”Call Your Name”SLEEPERS FILMも観たよ。ampleも参加しているよね。ベースもずっしりしていて気持ちよい。SLEEPERS FILMの映像はアナログ感あって良いね。
呂布 ”Call Your Name” SLEEPERS FILM
呂布 : 自分が本当に作りたいと思っていた作品ができて、これで自分の歯車がフィットしたので。社会の歯車になれたというか。周りも含めて。それでまたGARAGEに来るようになったし、GARAGEの外でもやっているし。
ハルオ : 一つの歯車となれるかは、重要だよな。場合によっては、集う人やスタッフの「本気の遊び」感覚を、一つのシーンを構成する要素としてはあまり重要視していない場所もあるとは思うんだけど。陰で支えていればそれでいい、っていう。多分、GARAGEはそうではないよね。僕はやっぱり人そのものが同じような感覚の人を引き寄せると思っていて。それが、GARAGEでは長い年月の間ずっと起こっているっていう。遊びの中で自発的に、本気で人と関わっていくことのできる人がここには多いと思う。
呂布 : なんていうか、「面白い」を繕って見せている人じゃなくて。勝手に面白い人みたいな。GARAGE的にフィットする人って。
圓山 : フィットしない場合はこっちの責任だと思うんですけどね(笑)。
シャラ : 元から合わない人はいないってことですか?
呂布 : きっかけを作るような場所だと思うんですよ。挑戦できるような。もう一段階、レベルを上げられる場所というか。それを活かすかどうかは本人次第なので、それをプラスに持っていける、経験をプラスに変えられる人がフィットしている人かな。自分が巻き起こす人が引き合ってるんじゃないでしょうかね。
圓山 : まあ、俺やGARAGEが全部操作して、とか、GARAGEが誰と誰をつなげて、とかは正直、ないので。勝手に呂布とかがやってるっていう。イベント『KUTTUK』とかもflauと一緒にイベントを画策したりとか。
ハルオ : それだけ、掛け値なしにオープンな人が多い場所だと思う。自然と、自分が、っていう。ひとまず、1998年〜2016年まで、ざっと18年間くらいの話になりましたけど、結論、訪れる楽しい(本気で遊ぶ)人が人を引き合わせる・引き寄せる、そういう魅力は何も変わってないと思います。これだけ長い間、世代が変わってもその良さが、ほぼ正確に引き継がれている場所というのも珍しい。「昔は良かった」ではなくて、大事な部分は何も変わらず、引き寄せ合う魅力を今の世代が継承しつつ、フレッシュに新しい動きをしているという。これは東京にあるから、ではないということを知ってほしい。
呂布 : 生かすも殺すも自分次第です
圓山 : 呂布を見ていると自然と出来ているから、それが嬉しいなっていう。
ハルオ : ではそろそろお時間です。皆さん、下北沢GARAGEに訪れてみてくださいね。いろんな人が、いろんなことを自分で巻き起こしているのを目撃できますし、シャラちゃんのように最初はお客さんかもしれませんが、この対談で、もっとGARAGEを身近に感じられるかと思います。もちろんライブハウスですけど、その不思議な魅力を是非感じに、思いきり遊びに行ってください。圓くんたちとも仲良くなれると思いますよ。始まりはそこですし。大阪にもこういった空気感は増やしたいですけども。
圓山 : おいでよ。もう引っ越ししようよ!
シャラ・呂布 : ひっこし ひっこし
ハルオ : 勝手なこと言ってんなー(笑)今日はありがとうございました!
呂布・圓山・シャラ : ありがとうございました!!
2016年 某日収録